かざして便利、かざして楽しい! NFCを活用した次世代イベント

交通系ICカード(Suica、PASMOほか)、おサイフケータイなど、タッチしたりかざしたりすることで受けられるサービスが、私たちの生活にすっかり定着しました。これらは、NFC(Near Field Communication)と呼ばれる近距離無線通信の技術を使ったものですが、最近はこの技術をイベントに活用する例が増えています。今回は、無線通信技術をベースとした各種ソリューションを提供する株式会社ハヤト・インフォメーション(本社:東京都新宿区)の大坂氏に、同社のイベント分野での取り組みについてお聞きしました。

イベント仕事人に聞く

株式会社ハヤト・インフォメーション

RFID/NFC エバンジェリスト 大坂 泰弘 さん

無線通信によって情報を読み書きするRFID技術を中心に、各種の製品・サービスを提供。RFIDを使ってモノや人の場所をリアルタイムで記録・可視化するソリューション、NFC(近距離無線通信技術)搭載のスマートフォンを活用したサービスなど、RFID/NFCの用途・活用フィールドの拡大に日々取り組んでいます。

─まずは、ハヤト・インフォメーションさんの事業内容を教えてください。

当社は、RFID(Radio Frequency IDentification)などの自動認識技術を核に、スマートフォンからクラウドまで幅広いソリューションを提供しています。RFIDやバーコードを活用した製品は、お客様の業務・現場を省力化・迅速化・正確化、そして見える化します。2006年発売の倉庫管理システム「MANICA(マニカ)」は、自動認識技術の特徴を生かし、入出庫・棚卸しといった作業が誰にでも簡単にできるように設計・開発しました。この考え方はその後のスマートフォンやクラウドを利用したパッケージやサービスにも受け継がれています。

そもそもRFIDやNFCって何だろう?

─近距離無線通信とか、RFIDとか、なんだか難しいのですが、簡単に言うとどのようなものですか?

RFIDは、電波を使ってICタグと呼ばれる小型チップを個別識別したり、情報の読み書きを行ったりする仕組みのことです。たくさんのモノをひとつひとつ正確に管理するのにとても便利で、製造から在庫管理、流通販売、イベントまで様々な分野で導入されています。例えば倉庫で使えば、モノがどこにあるか、いくつ残っているかなどがすぐにわかるようになります。

NFCは、Near Field Communicationの名前が示す通り、10cm程度の近距離通信を指す世界標準規格です。最も特徴的な機能は「非接触」。かざすだけで誰でも簡単にデータ通信ができます。NFCのひとつである「FeliCa」(ソニー)は、おなじみの「Suica」「PASMO」「nanaco」などにも採用されています。すでに私たちの生活に密着した技術なんですね。その活用は決済にとどまらず、NFCを搭載した機器同士なら、例えばスマホをテレビにかざして大きな画面に写真を表示したり、プリンターにかざして写真を印刷したりといったこともできます。あるいは、スマホを紙のポスターにタッチすると、しゃべったり、ナビしたり、特定のサイトが表示されたり…。この場合は、スマホがポスターに埋め込まれたICタグの情報を読み取り、その情報に従って動作します。TwitterやFacebookと連動するなんてこともできますよ。

ポスターにスマホをかざして情報をゲット

─バーコードやQRコードとは何が違いますか?

RFIDはカードや機器に数ミリ角のICチップと小さなアンテナを組み込んだICタグを使うため、データを書き込める、複数同時に読み込める、汚れに強いなどの長所があります。また、電波で情報をやり取りするため、ICタグが見えない状態でも読み取ることができます。例えば、リーダー(読み取り機)をかざして複数の入荷商品を一括して登録したり、段ボール箱を開封せずに中の商品をチェックしたり…。バーコードですと、ひとつひとつ読み取るため時間がかかりますし、暗いと読めないことがありますよね。

イベントでの活用事例を見てみよう

─イベントでの利用が増えているようですが、どのような使い方ができますか?

RFID/NFCを活用したイベントは増えていますね。

まずわかりやすいところでは、イベントの運営管理に利用されています。ICタグが付いたチケットを使えば、入退場を自動的に記録できます。特定のお客様の来場を担当者にメールで通知することも可能です。ICタグにポイントを入れておけば、会場内でポイントを使って買い物をしたり、飲食を楽しんだりといったことができますね。個々のブースや店舗で現金(おつり)を用意する必要がありませんから便利です。

来場者に事前にメールアドレスを登録してもらうことで、会場内での行動に合わせて商品の詳細やおすすめなどの情報をタイムリーに送ることができます。また、イベント終了後もウェブサイトなどを通じて情報提供が可能です。来場者の満足度がアップすれば、リピーターの増加が期待できるでしょう。

来場者の行動(ICタグをかざす)はデータとして残りますから、会場内でどのように動いたのか、また行動とイベント演出との相関などもわかります。例えば、各ブースの見学順や滞在時間・商品購入の時間帯といったデータを次回のブース配置の参考にしたり、進行や演出の改善に役立てたりできます。興味のある分野を把握することで特定の来場者にアプローチすることも可能ですね。詳しくはこちらをご覧ください。

─実際のイベントでの活用事例を教えてください。

ここでは具体的にふたつのイベントをご紹介します。

まずひとつ目は「SAKE&WINEエクスペリエンス」(一般社団法人食品振興会主催)。京都で開かれた、ワインと日本酒が楽しめるイベントです。このイベントではNFC入場券による入場管理と、会場内での飲食をポイントで精算するシステムが採用されました。

参加者はICタグが付いたチケットで入場し、あらかじめチケットにチャージされているポイントを使って、フードやドリンクに交換できる仕組みです。入場券をフードコーナーのスタッフに渡して、受付用のスマートフォンにタッチしてもらうだけで交換処理が完了。現金が不要なだけでなく、来場者、スタッフともに面倒な操作は一切ありません。また、事前に来場者専用サイトからメールアドレスを登録していただいた方には、試飲した際にワインの情報をリアルタイムで送信。飲んだ銘柄を覚えておくのはなかなか難しいもの。あとから詳しい情報を見返すことができるため、気に入ったワインを購入する際に役に立ったと好評でした。

ふたつ目の事例は、日比谷野外音楽堂(東京)で開催された音楽イベント「琉球フェスティバル2014」です。来場者2000人にICタグとQRコードが付いたカードを配布。このカードを使ってスマホから特設サイトにアクセスすれば、現在演奏しているアーティストのプロフィールや楽曲情報を見られるようにしました。情報配信には当社のNFCモバイルマーケティングサービス「tapee(タッピー)」を使用。時間帯によってアクセス先のURLを切り替えられる機能により、ライブ前はフェス紹介ホームページへ、ライブ開始後は出演中のアーティスト情報へと、来場者が欲しい情報をタイムリーに届けることができました。また、アーティストのサイン入りグッズの抽選や、会場周辺の飲食店情報の提供も実施。ライブ終了後も、特設サイトから出演者のCDやグッズの購入ができるようにしました。

これらのほかにも、NFCカードを使ったスタンプラリー、スクラッチ、スポーツイベントの参加受付・タイム計測・集計など、利用シーンはどんどん広がっています。

琉球フェスティバル2014」ではICタグとQRコードが付いたカードを配布

イベントをバージョンアップしよう

─RFID/NFCをイベントに導入する場合には、どんな準備が必要でしょうか?

まず最初に確認したいのは、イベントの内容、規模(来場者数)、来場者リストの状態といったところでしょうか。それによって使用するICタグの種類や枚数、リーダーを決めていきます。また、単に入場・受付処理をするだけなのか、特定サイトへの誘導やポイントの仕組みを使うのかなど、やりたいことに合わせて必要なシステムをアレンジします。

どんなことをしたいかによって、ICタグに入れる情報も変わります。ICタグには手軽なシールタイプをはじめ様々な種類があり、用途によって使い分けます。最小コストはNFCタイプで1枚60円程度です。ICタグへの情報の書き込みはお客様側で行えますが、もちろん当社で実施することも可能です。

入場確認だけであれば、「来場者300人分のICタグ費用(シールタイプ)/NFCリーダー1台(レンタル)/Excelベースの来場者管理システムがインストールされたPC(レンタル)」の構成で10万円を切る価格でお試しいただくことができます。

わからないことがあれば、どんなことでもお気軽にご相談ください。みなさまのイベントに合った、またご予算に応じたプランをご提案させていただきます。

様々な種類のICタグ。シールタイプなら既存チケットが簡単にNFC仕様に!

─RFID/NFCを活用することで、イベントはどのように変わっていくとお考えですか? また今後の展望をお聞かせください。

主催者にはイベントオペレーションの効率化が、来場者には利便性の向上がもたらされると思います。主催者側は得られた情報を蓄積・分析することで、一回限りではない、次につながるイベントへのバージョンアップを図ることができます。

RFID/NFCは小さなタグに無限ともいえる可能性と楽しさが詰まっています。そして意外に簡単。一度お使いいただけるとわかるのですが、決して難しいものではないんです。最初は小さなところからでもいいと思います。ぜひみなさんのイベントに取り入れてみてください。私たちは、読み取り精度の向上、コンテンツ配信のブラッシュアップなどを進め、RFID/NFCの普及と発展に努めていきたいと考えています。

※本記事記載の社名および製品・サービス名は一般に各社の登録商標または商標です。

株式会社ハヤト・インフォメーション

イベントの入退場チェックや会場内決済がNFCを使って簡単・スマートに!