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リアルタイムの雷情報を活用して 屋外イベントの落雷事故を防ごう

2015年12月10日

岸田拓己氏 イベント仕事人に聞く
株式会社フランクリン・ジャパン
営業部 営業1課 係長 岸田拓己氏(気象予報士)
 神奈川県相模原市に拠点を構える民間の気象情報会社。1991年の創業以来、20年以上にわたって、リアルタイムの雷情報を中心とした総合気象情報を提供しています。全国に張り巡らした自前の雷観測ネットワークにより、世界最高クラスの精度を誇る雷データや雷が発生する確率予報を発信。同社の気象情報は、工場、ゴルフ場、レジャー施設などのほか、屋外イベントにおける来場者の安全確保にも活用されています。

イベントの運営にあたっては様々なリスクを想定しておくことが必要ですが、とくに屋外で行われるイベントでは、来場者の安全を守るために、雨や風、雷などへの備えが欠かせません。最近では、局地的に大量の雨が降るゲリラ豪雨が多発しているほか、強風や竜巻によってテントが飛ばされケガをしたといったイベント会場での事故も少なくありません。イベント参加者の落雷事故をめぐっては、かつて訴訟が起こされ主催者側の責任が問われたこともあります。

昨今では、気象観測や情報処理の技術が進歩し、ピンポイントの天気予報やリアルタイムの気象情報が得られるようになっています。豪雨や落雷そのものを防ぐことはできませんが、的確な情報収集によって事故をなくしたり減らしたりすることはできるはずです。

今回は、雷・気象情報を提供する株式会社フランクリン・ジャパン(神奈川県相模原市)の岸田氏に、イベント運営者が知っておくべき、気象情報を活用したリスク管理についてお聞きしました。

─フランクリン・ジャパンさんの事業内容について教えてください。

落雷から人命や財産を守ることを目的に、雷をはじめとする精度の高い気象情報を観測・作成・提供しています。雷の観測には、自社で構築した全国規模の雷観測ネットワーク(JLDN:Japanese Lightning Detection Network)を使っています。全国を網羅した均質な雷情報を提供できる唯一の企業と言っていいでしょうね。これらの気象データは、ネットやテレビの気象解説に利用されているほか、ゴルフ場や工場・倉庫の落雷対策、鉄道や携帯電話会社の設備保護など、社会インフラの安定稼働のために生かされています。身近なところでは「Yahoo!JAPAN 天気・災害 全国の落雷情報(実況)」が弊社の情報を使用しています。

現在、私たちが雷・気象情報を提供しているお客様の数は500以上となります。その中でも最近急増しているのが、野外コンサート、花火大会、地域のお祭り、学校の課外活動といったイベント支援の分野です。

知っているようで知らない雷のこと

─そもそも雷とはどのようなものですか?

冬場に多い静電気を思い浮かべてみてください。ドアノブに触れた瞬間など、バチッと音がして光り、衝撃がありますよね。雷は、これが大きくなったものと言えます。積乱雲の中で氷の粒がこすれて静電気が生じ、地上めがけて一気に放電する現象、これが落雷です。

日本では夏場の7・8月に雷が多く、ひと月に100万発を超える落雷が発生する年もあります。逆に冬には日本海側で雷が多くなります。落雷は不規則かつ突発的なため、雲の下ではいつどこで発生してもおかしくありません。その点で雨や台風に比べて予測が難しく、特別な観測体制が必要となります。

─落雷による事故や損害にはどのようなものがありますか?

落雷による死傷、火災のほかに、電気・機械・通信設備などの損傷があります。例えば工場では、一時的に電圧が変化するだけでも、電子部品や精密機器などの製造ラインが大きなダメージを受けることがあります。停電や通信障害による社会インフラへの影響といったものを含めると、雷による被害額はかなりのものになるでしょう。

弊社の雷情報を活用し、例えばゴルフ場では、プレー中のお客様に注意を促したり、避難を指示したりします。また、製造現場では、事前に自前の電力系統に切り替えることで、被害を最小限にとどめるような対策を行っています。

─雷から身を守るために気を付けることは何でしょうか?

雷は高く突き出たものに落ちやすいため、高い所と、周囲に高いものがない開けた場所が危険です。建物の屋上や山の頂上、ゴルフ場やグラウンド、屋外プールや砂浜などは落雷リスクが高い場所と言えます。野外コンサートや花火大会の会場もこれに該当しますね。

“時計やアクセサリーなどの金属を身に着けていると危ない”と聞いたことがあるかもしれませんが、じつはこれは関係ありません。周囲に高いものがあるかどうかがポイントとなります。とくに気を付けていただきたいのが高い木の下です。木に落ちた雷が人に飛び移る「側撃(そくげき)」を受ける可能性があるからです。雷が鳴っている時に木の下で雨宿りするのは危険ですから、すぐに離れて建物や車の中などに避難してください。逆に鉄筋の建物の中や、自動車・電車の中は安全と言えます。

雷による事故や損害をなくすことが私たちの使命です

正確な情報を知って雷の事故を防ごう

─イベントにおける雷対策として貴社が提供できるサービスは何ですか?

イベントを運営する方向けに「イベント気象支援サービス」というパッケージをご用意しています。PCの画面上で詳細な雷・気象情報をカスタマイズして見られる「Lightning Scope +」、これの簡易版である「カミナリWeb」、会場周辺の気象情報をFAXで知らせる「定時ピンポイント予報FAX」、気象予報士に落雷の状況や予測、天気予報などを電話で問い合わせできる「気象予報士サポート」があります。自社の観測網を使い、1年365日、発生から15秒以内に落雷の情報をお知らせします。落雷の捕捉率は90%以上、誤差500m以内での予測・警告が可能です。また、雷以外の気象・防災情報も含めトータルサポートを行っています。

個々のサービスはイベントの規模などによって使い分けすることができます。例えば、大規模な野外コンサートの場合はフルパッケージで、小さな催しの場合は「カミナリWeb」だけで、といった使い方ができます。みなさまのイベントに最適なプランをご提案しますので、お気軽にご相談ください。

左が「Lightning Scope +」、右が「カミナリWeb」の画面

─気象庁のサイトなどでも気象情報が見られますが違いは何ですか?

無料で見られる気象庁や電力会社の情報は、概して広範囲で、情報の更新間隔が長いといった傾向があります。イベントの主催者・運営者がほしいのは、会場周辺に特化したピンポイントかつリアルタイムの情報です。また、気象のプロに相談したいといったニーズもあります。イベントを安全に実施するために必要な精緻なデータの提供という観点で、弊社のシステムは貢献できていると感じています。

─サービスを導入する際の手順は?

会場の状況やイベント日程、規模など条件に合わせてご提案・ご説明させていただきます。雷シーズンのみ、イベント期間中だけといったご契約ももちろん可能です。料金は「カミナリWeb」を1日間ご利用の場合14500円。そのほか利用するサービス、期間によって様々な料金プランがあります。サービス利用開始の2~3週間前にはお申し込みください。

リアルタイムの雷情報と気象・防災情報を統合した「Lightning Scope +」には、衛星版と有線版があります。インターネット回線がない場所に対応した衛星版は業者が設置から撤去まで対応、有線版は弊社からお送りした機器にネット回線を接続してお使いいただきます。事前にお客様のイベント会場位置などをセットしておきますのですぐにご利用になれます。

イベント当日のタイムスケジュール例

イベント参加者と運営者の安心をサポート

─貴社のサービスが利用されたイベント例を教えてください。

日本を代表する野外フェス「FUJI ROCK FESTIVAL」(新潟県湯沢町 苗場スキー場)、「ROCK IN JAPAN FESTIVAL」(茨城県ひたちなか市 国営ひたち海浜公園)や、個別アーティストのスタジアムコンサートなど音楽関連のイベントが2014年に88件ありました。2015年は夏の段階で78件ですから、さらに増えそうです。ゴルフトーナメントほかスポーツ系も年間100件ほどありますので、合わせて1年間で約200件のイベントでご利用いただいています。

大きなイベントでは、弊社の気象予報士が現地に出向いて支援させていただくこともあります。「ROCK IN JAPAN FESTIVAL」では、避雷針を取り付けた巨大なクレーン車を会場内に10台配置し、雷が接近した際はクレーンを伸ばして足元に保護エリアと呼ばれる安全地帯を設けます。避難指示の判断材料として弊社の雷情報を利用しています。

そのほか、夏祭り、花火大会など、広い場所に多くの人が集まるお祭り・イベントでご利用いただいています。

人がたくさん集まる屋外イベントでは落雷対策が欠かせません Photo:FUJI ROCK FESTIVAL

─貴社サービスに関するイベント運営者の声は?

代表的なご意見としては、「イベント会場を中心としたリアルタイムの雷・気象情報が瞬時に得られる」、「情報量が多く、かつ見やすいので、素早く判断できる」、「設置や操作が簡単」、「会場に合わせて警戒するエリアを設定できる」、「危険が迫ると音で知らせてくれる」といった、現場での使いやすさや、カスタマイズ性を評価してくださるものが多いですね。

これまでは、来場者の避難やイベントの中止といった重要な判断も担当者の経験と勘に頼っていました。ところが、弊社のデータをご活用いただければ判断基準が明確となり、その後の対応もスピードアップします。「決断する際の客観的かつ科学的な根拠が得られ、属人的な判断から脱却できました」といった言葉をいただいた時はホッとしました。

野外イベントでの活用事例をチェック!
 株式会社ホットスタッフ・プロモーション様の例

─そのほかに、イベント運営者向けのサポートメニューはありますか?

フランクリン・ジャパンでは、「落雷証明書」「落雷報告書」という書類を有償で発行しています。「落雷証明書」は、文字通り、お客様ご指定の地域・期間に落雷があったこと(またはなかったこと)を証明するもので、「落雷報告書」は、落雷のさらに詳細なデータを提供するものです。機材などに損害保険をかけていた場合、興行中止保険に加入していた場合の保険請求のための資料として利用できます。イベントだけに限りませんが、これらの書類の発行は年間でかなりの数にのぼります。

─今後の貴社の展望について教えてください。

先ほども申しあげましたが、現在、年間約200件のイベントで弊社サービスをご利用いただいております。防災に関する意識が高まっていることもあり、ここ数年はとくに利用件数が大きく伸びています。

私たちの使命は、雷・気象に起因する事故や損害を減らすことです。落雷事故は備えることで減らせますから、さらに多くのイベント運営者の方々にご利用いただけるよう、導入のハードルを下げた使いやすいサービスを構想中です。

今後も、イベント来場者の安全確保と主催者・運営者のイベント成功のために、サービスの改良・拡充に努めていきます。