イベントコラム

インバウンドの本格回復に向けて、訪日外国人の受け入れ準備を始めよう

日本政府観光局(JNTO)の発表統計によると、2022年の訪日外国人数は383万人。新型コロナウイルス感染拡大前・2019年(3188万人)のわずか12%にとどまるが、12月単月(137万人)では2019年同月の54%となり、インバウンドの回復傾向が鮮明になってきた。

この間、新型コロナの世界的流行はさまざまな産業に影響を与え、人々の自由な移動を前提とする観光・イベント業界も、国内の行動制限、そしてインバウンドの消滅によって大きな打撃を受けた。

正確な未来予測は難しいが、外国人旅行者の受け入れ再開、水際対策の段階的な緩和により回復に向かうインバウンド。今後さらに増えるであろう外国人旅行者のためにどのようなことが必要なのか、訪日旅行が素晴らしいものとなり、二度三度と足を運んでもらうためには何をすべきなのか。長いトンネルの先に光が見えつつあるいま、インバウンドの受け入れ対応について考えてみよう。

インバウンドが回復トレンドに!受け入れ準備をいま始めよう

2016年に政府が掲げた2020年の訪日外国人旅行者数の目標は4,000万人。そのうちの6割となる2,400万人をリピーターとして見込んでいた。ところが2020年2月頃から、新型コロナの世界的大流行によって訪日客数が急激に落ち込み始め、同年夏に予定されていた東京オリンピック・パラリンピックは延期となった。2020年の訪日客数は411万人で政府目標のわずか1割。さらに2021年は24.6万人となり、JNTOが統計を取り始めた1964年以降最低を記録、インバウンドはほぼ消滅した。

2022年になると、入国者数上限の段階的引き上げなどにより訪日客数が徐々に増加、10月の大幅な水際対策の緩和後は急激にその数を戻している。

訪日外国人数の月別推移 データ出典:日本政府観光局(JNTO)

インバウンドの本格回復はいつだろうか。国内でもさまざまな予測がされているが、「2023年末には年換算で2,000万人を超える水準まで回復する(日本総合研究所)」、「2024年の2月に2019年の水準を上回る(野村総合研究所)」といった見方があるなど、2022年末の急増傾向を踏まえると、やはり2023年はインバウンドが回復に向かう一年になるだろう。

観光庁はインバウンドの本格的な回復を図るため、2023年度に「観光再始動プロジェクト」を実施する。地方公共団体・観光地域づくり法人(DMO)・民間事業者などによる、新規性が高く、特別な体験コンテンツ・イベントについて助成を行い、インバウンド促進の方向性を検証する取り組みだ。

官民ともにインバウンド対策への関心が高まる2023年。この機運を味方につけ、また遅れをとらないためにも、地域の実情に沿ったインバウンド対応を行い、地域そして日本の魅力を発信していきたい。

訪日外国人旅行者が期待すること~地域の資源を日本の魅力に

外国人が日本に期待するものは、買い物、食事(日本食)、自然・景勝地、歴史・文化、都市景観(街歩き)、温泉、スキー場(雪質・パウダースノー)など多岐にわたっている。日本アニメ人気から、いわゆる「聖地巡礼」目的で訪れる人も少なくない。

インバウンドに限ったことではないが、消費傾向が「モノ消費」から「コト消費」へと移りつつあるいま、旅行者は「日本ならではの体験」を求めている。初めての日本旅行で、東京・富士山周辺・名古屋・京都・大阪を巡る「ゴールデンルート」を体験したら、2度目以降は地方に足をのばし、地域に根差した文化やその土地の食にふれる…。日常の日本を体験したいという人が多くなる傾向だ。

2023年1月にニューヨーク・タイムズが発表した「2023年に行くべき52カ所」に、ロンドンに続いて2番目に岩手県の盛岡市が取り上げられた。国内では意外感もあり注目されたが、日本に暮らす我々には地方の持つ魅力、外国人旅行者から見た日本の魅力に気付きにくいのだろう。

人々の往来を止めたコロナ禍の日々を経て、再び国を越えた移動が自由になりつつある。日本を訪れる外国人旅行者の目線に立って、受け入れの準備をすることがいま求められている。

インバウンド対策のキモは環境整備と日本ならではの体験の提供

インバウンド対策としてどのようなことが必要なのか、受け入れ環境の整備に関する事項と、イベント・サービスなどの具体的なコンテンツに分けて考えてみよう。まず、環境面で必要となる基本的なものとしては、「キャッシュレス化」「Wi-Fi整備」「多言語対応」が挙げられる。

キャッシュレス化

日本のキャッシュレス決済比率は約20%だが、主要各国は40%~60%台(経済産業省 キャッシュレスの現状及び意義・2020年1月)。主要国と比較すると日本はキャッシュレス化が遅れており、2025年までに40%程度にすることを目指すという。

キャッシュレス決済手段は、クレジットカード、デビットカード、電子マネー、モバイルウォレット(スマホ決済)などがある。自国でのキャッシュレス決済に慣れた旅行者は旅先でも同じものを使いたいだろう。対応していない場合は現金を用意せざるを得ず、店舗側に機会損失が発生する可能性がある。インバウンド需要をしっかりと取り込むためにはキャッシュレス対応が必須と言える。

Wi-Fi整備

誰もがスマートフォンを手にするいま、特に訪日外国人へのWi-Fiの提供は不可欠なサービスだ。ネットによる情報収集、SNSへのアップなど、旅行者にとってインターネットにつながることは大きな安心感となる。Wi-Fi環境の構築は、多数の接続が想定される大型施設などは専門事業者へ相談するのが懸命だが、小さな規模なら、ネット回線の用意や設置工事が必要なく、電源さえあればフリーWi-Fi環境を提供できる手軽なサービスもある。事業者のウェブサイトなどをチェックしてみよう。

多言語対応

日本滞在中の困りごととしてよく挙げられるのが、施設スタッフとコミュニケーションがうまく取れなかった、案内表示が少ない・わかりにくい、といった言葉の問題だ。リーフレット、メニュー、地図、サインなど、訪日客の目線で点検し、外国語版を作成したり、外国語を併記したり対策を講じたい。

コミュニケーションにはデジタル機器の活用も有効だ。スマートフォンやタブレット端末に通訳・翻訳アプリを入れておこう。日本語で話すと外国語音声に変換してくれるものなど、この分野の技術の進歩は目覚ましい。必要な時だけ外国語対応スタッフを派遣してくれる会社もある。

サービス・企業例:「KDDI AI翻訳」はスマートフォンやタブレットで簡単に使える多言語翻訳ツール(初期費0円・月額料金制)。多言語表示可能なGPS観光オリジナル案内マップを制作してくれる「株式会社セイコム」。イベントリポート、外国人インタビューなどの撮影・編集を依頼できる映像制作会社「株式会社文京映像」。インバウンド対応派遣(通訳コンシェルジュ)・多言語対応スタッフの手配や外国人派遣などに対応する「株式会社サツキャリ」。

舞踊ステージ(エックスイベント企画)/ 足湯レンタル(ブライトホームサービス)

インバウンド対応は環境整備のほかに、訪日外国人に向けたイベント・コンテンツも重要だ。日本を訪れる外国人旅行者は、日本的なものや、日本ならではの体験を期待していることが多い。侍や忍者などのパフォーマンスショー、和文化ショーや和文化体験、地域の人たちと交流できる仕組みも喜ばれる。

大がかりなショーや派手な演出でなくとも、和を感じさせるアイテムをレンタルしイベントに加えるだけでも、ちょっとしたおもてなしになるだろう。日本人にとっては当たり前でも、外国人にとっては魅力的に映るものも多い。日本ならではのイベントコンテンツを提供している会社をピックアップしたのでぜひ参考にしていただきたい。

和文化ショー・和文化体験の会社

和のアイテムをレンタルでできる会社