イベントコラム

電子チケットを導入してチケッティング業務をバージョンアップ

データやデジタル技術を活用した社会の変革を指す「デジタルトランスフォーメーション(DX)」という言葉を聞いて久しいが、私たちの普段の生活においても、多くのモノやコトがデジタルにシフトしているのを実感できる。スマホひとつで、買い物、フードデリバリーはもちろん、タクシーを呼んだり、電車に乗ったり、オンデマンドで音楽や映画も楽しめる。ファミレスに入れば、卓上のタブレット端末で料理を注文、運んでくるのは配膳ロボットだ。

人の往来が制限されたコロナ禍においては、Zoomなどを使ったオンライン会議が急速に一般化した。パソコンやスマホで、どこでも誰とでもつながることができ、リモートワークなど多様な働き方を後押しした。ビジネスの世界でミーティングと言ったら、いまやオンラインがデフォルトだ。

観客を入れたリアルなエンターテインメントが減少する中、スマホやパソコンで、お気に入りのアーティストの配信ライブを観たという人も多いだろう。人と人の接触を減らす必要性から、コンサートや演劇、スポーツ、イベントでは電子チケット(デジタルチケット)の普及が加速。紙チケットをもぎってもらう機会は減り、スマホ画面を見せたり、機器に読み取らせたりして入場することが増えた。

電子チケットの普及は、イベント主催者、参加者に何をもたらしたのだろう。主催者や会場の担当者が電子チケットの販売サービスを選ぶ際のチェックポイントとともに見ていこう。

イベントチケットのデジタル化が加速、電子チケットシフトが鮮明に

イベント・興行のチケットといえば、少し前までは電話やインターネットで予約し、紙チケットをコンビニなどで発券していた。最近では購入したチケットをスマホで受け取り、スマホで入場する電子チケット方式が増えてきた。電子チケットなら、発券のために店頭に出向く必要がなく、チケットをなくしたり、当日忘れたりするミスも減る。公演にもよるが、同行者にネット経由でチケットを渡せるため、事前に会ってチケットを手渡す必要もない。

一方で電子チケットは、購入したことを忘れてしまう、さまざまな方式・サービスがあり手順が煩雑、問題なく入場できるか不安、記念になるものが残らないなど、情緒的な面を含めて利用者側の心配事もゼロではない。特にスマホ操作に慣れていない人はとまどうシーンがありそうだ。

電子チケットはスマホを使うため、通信障害などの影響を受けることがある。2022年の夏には、大手通信会社で大規模な通信障害が発生し、電子チケットの表示や分配がしにくくなった。当日公演を予定していた主催者はWi-Fi環境での事前の表示・分配を呼び掛けたり、急きょ会場にWi-Fi環境を設けたりなど混乱した。スマホのバッテリー切れ、故障といった電子機器ならではのトラブルも避けることは難しい。頻度は低いかもしれないが主催者としては不測の事態に備える必要がある。

去る2019年6月14日に「チケット不正転売禁止法」が施行された。興行主の同意のない有償譲渡を禁止する旨が明示された座席指定等がされたチケット(特定興行入場券)について、ネット上も含めて高額転売等を禁止する法律だ。高額転売は、興行主や出演者に利益はなく、一般の人はチケットが手に入りにくくなる。紙チケットの場合は物理的に他人に譲渡することが容易だが、電子チケットは現在の所有者が特定されているため不正転売が難しくなる。不正転売や偽造の防止の観点からも電子チケットの普及はさらに進んでいくだろう。

イベント・興行チケットはデジタルシフトが加速している

利用者と主催者ふたつの目線でチケッティングに必要な機能を精査する

小規模なイベントや会場では、参加者の管理を手作業で行っていることも多い。電話やFAX、メール、ウェブフォーム、窓口などで申込を受け、当日は会場受付で来場者を照合する。小規模・頻度が低い・参加無料・自由席の場合にはまだよいが、そうでなければなかなか大変だ。定員に達したら告知を修正、抽選方式なら抽選作業と当落通知、有料の場合は徴収業務(口座入金確認、現金払いなら釣銭準備)、指定席なら座席表を都度塗りつぶし、イベント終了後は各種集計…。チケッティング業務の効率化、参加者の利便性向上のために、電子チケットの導入を検討してみるのがよさそうだ。

電子チケットを発行できるチケット販売サービスは数多く存在する。それぞれに特徴があり、機能やカバーする領域、得意分野もさまざまだ。ユーザーはイベント情報ページ(チケット販売ページ)でチケットの種類や枚数を選び、クレジットカードなど決済に必要な情報を入力して購入。当日は購入したチケットをスマホに表示して、会場受付でもぎってもらい入場する。この流れはいずれのサービスでもそれほど変わらない。イベント主催者はどのサービスがマッチするか比較・検討することになるが、事前にそのチェックポイントを確認しておきたい。

利用するサービスによって多少異なる部分はあるが、チケット販売サービスのウェブサイトから、おおむね次のようなステップで電子チケットの導入ができる。主催者情報の登録(主催者名・チケット販売代金の振込口座など)→イベント情報の登録(イベント名・日時・会場など)→チケット情報の登録(チケット種別・価格・販売枚数・販売期間など)→イベント情報ページの告知(チケット販売ページへのリンクを張る)→チケット販売期間→当日入場受付(もぎり)→チケット販売代金入金。電子チケットの利用者とイベントの主催者、双方の目線で主な機能を確認してみよう。

チケットの種類

1回券(1回だけ入場できる通常のチケット)、通し券(複数回の入場ができるチケット)、整理番号付き、時間指定付き、回数券、自由席、指定席など。サービスによって扱える種類が異なるので、イベント・会場に合ったチケットが販売できるか確認しよう。

チケット料金

無料チケット・有料チケットのいずれにも対応するサービスが多い。有料指定席で学生・一般・シニアなど料金を変えたい場合は、ひとつの席に複数料金の設定ができるかを確認。

販売方法

先着方式、抽選方式など。希望する販売方法が選べるかをチェック。

決済方法

クレジットカード、コンビニ払い、電子マネー、キャリア決済、銀行振込など。クレジットカードとコンビニ払いで広くカバーできる。ほとんどのサービスがこの2つに対応しているが、地域によっては使えるコンビニのチェーンに注意しよう。

チケットの譲渡・分配

複数枚購入したチケットを同行者に譲渡・分配する機能。メール・LINEなどで送れることが多い。

入場受付方法(もぎり方法)

来場者のチケット(スマホに表示されたQRコードなど)をスタッフが専用アプリでスキャンする、または来場者がスキャン機器にかざす、チケット画面をスタッフがタッチする(ボタンをスライド、画面に円を描くなどのジェスチャー)、チケット画面にスタッフが電子スタンプを押す、顔認証といった方式がある。QRコードのスキャンは非接触&スピーディー。多くの興行で使われている。

状況確認・参加者管理

リアルタイムの販売状況・売上状況、来場率といった基本的なデータを確認できる機能。販売状況を見ながら告知・PR戦略を練り直すなど、イベント成功に向けた重要なデータが得られる。

メッセージ送信

チケット購入者への個別または一斉のメッセージ送信機能。イベント内容の変更連絡、開催前のリマインド、緊急伝達などに利用。購入者への連絡手段として備えておきたい機能と言える。

返金処理

イベントの中止時などのチケット購入者への返金処理。返金範囲(クレジットカード決済の人のみか、コンビニ払いなども含むか)に加え、払い戻し手数料についても確認しておきたい。

費用

初期費用、システム使用料、販売手数料、発券手数料、オプション追加料金など。無料イベントなら費用がかからないサービスも。有料イベントの販売手数料は販売金額の○%という設定が多い。

チケット販売代金の入金タイミング

入金タイミングは「イベント終了後の5営業日以内に支払い」「イベント終了後の10営業日以内に支払い」「イベント終了日によって翌月5日または20日に支払い」などサービスによって異なる。販売金額(売上)から販売手数料と振込手数料が差し引かれて指定口座に入金される。

その他

ライブ配信イベントに対応しているか、アンケート機能があるか(チケット購入時にアンケートをはさむなど)、招待券の発行ができるかなど、必要な機能を確認しよう。

機能や条件を比較してマッチするチケット販売サービスを見つけよう

電子チケットはQRコードをスキャンして入場する方式が主流

電子チケットを導入できるサービスは、イベントページの作成から、販売・決済、チケット発行、入場受付(もぎり)、販売代金精算まで、チケッティング業務全般をカバーしているものが多い。施設向け、ビジネスイベント向けなど特定領域に特化しているサービスもある。それぞれのサービスの特徴や機能をチェックして、主催するイベントにマッチするサービスを見つけよう。

電子チケット販売・イベント管理サービス

  • イベントの告知、事前決済・申し込み、参加者管理が簡単にできる「イベントレジスト
  • 840万人以上が利用するイベント管理&グループ運営サービス「Peatix(ピーティックス)
  • Yahoo! JAPANが運営するデジタルチケット販売サービス「パスマーケット」
  • 基本料金0円でイベント集客・管理とチケット販売ができる「teket(テケト)」
  • ライブイベントのチケット販売・予約・管理が簡単・無料「TIGET(チゲット)」
  • リアルもオンラインも対応するデジタルチケット販売サービス「LivePocket -Ticket-」
  • イベント・セミナー・ライブ・講演会などのチケット販売ができる「everevo(イベレボ)」
  • 紙チケット・電子チケット対応。簡単・便利なチケット発券システム「チケットペイ」
  • スムーズなチケット販売を実現するデジタルチケット販売管理システム「EventManager+」
  • レジャー・アミューズメント施設向けに特化したチケットシステム「CLOUD PASS」
  • LINEで利用者へ直接PR。クラウド型チケット販売管理サービス「チケット for LINE Hybrid」
  • チケット申込から入場まで。電子チケットサービス「ticket board(チケットボード)」
  • 小中規模アミューズメント施設(集客施設)の運営支援に特化「Smart Hello チケット」
  • チケット販売・管理・運用をカバーするチケット販売システム「いつでも発券」
  • イベント運営のすべてをひとつのツールで完結できるプラットフォーム「eventos」
  • オールインワンイベント運営プラットフォーム「Eventory(イベントリー)」
  • 誰もが自由に電子チケットを発券できるイベント管理システム「Flippa(フリッパ)」
  • ビジネスイベントに特化したイベントプラットフォーム「EventHub」
  • リアル・オンライン・ハイブリッド対応イベント管理プラットフォーム「Cvent(シーベント)」