イベントコラム

ワークショップとは? その種類と特徴、開催メリット、成功のコツ

アートや演劇など芸術の分野でしばしば耳にする言葉に「ワークショップ」がある。イベントや企業研修の実施形式のひとつとしても浸透しており、なんとなくイメージできるという人は多いだろう。一方で、セミナーや講座、あるいはレッスンや教室とは何が異なるのかなど、わかりにくい点も少なくない。

「ワークショップ」とは何か――。イベント主催者の視点でその意味をひもとき、ワークショップの特徴や実施するメリット・効用、ワークショップの種類、成功させるためのポイントを確認しながら、参加者に喜んでもらえるワークショップの作り方を探っていこう。

ワークショップって何? セミナーとは何が異なる?

「ワークショップ(workshop)」とは、もともとは作業場・仕事場・工房を意味する言葉で、参加者が体験を通して主体的に学習する「参加型講座」を指す。グループ学習のように皆が手や頭を動かし、コミュニケーションを取りながら進行する、講座・イベントのひとつの形式だ。

単に講師の話しを聞くのとは異なり、実際に体験することで理解が深まり、参加者同士のコミュニケーションが相互に影響を与えるなど、立体的な経験ができるのがワークショップの特徴といえる。

アートや工作などの創作系のものから、ビジネス・行政といった実務的なものまで、多様なテーマに活用できるため、参加型イベントにワークショップの形式を取り入れる企業や自治体が増えている。

ワークショップと似た形式のイベントにセミナーや講座がある。ワークショップとセミナーの違いは、情報や学習内容を伝える方法だ。ワークショップは参加者が主体となり、能動的に体験することで情報を得ていく。一方、セミナーは講師など主たる指導者が存在し、参加者はやや受動的に講義を聞くスタイルとなる。質疑応答の際に講師とはコミュニケーションが取れるが、参加者同士の議論の場が設けられることはほとんどないだろう。

一般的なセミナーは講師が参加者に話すことがメインで参加者同士の議論の場はない

セミナーのメリットは、テーマに興味のある参加者を集めて開催し、内容がマッチすればイベント後に積極的なアクションを期待できること。逆に、期待する情報を得られなければテーマへの関心自体が消滅してしまうことがある。セミナーを開催する場合は、テーマとターゲットの設定を明確にし、ミスマッチを回避することが重要だ。また、セミナーでは講師がキモとなることから、一般的には知名度の高い専門家や有識者が喜ばれる。

ワークショップのテーマは多彩。さまざまなシーンに活用できる

ワークショップは、商業施設などの集客、販売促進、文化芸術体験・振興、ビジネス課題解決、教育・学び・福祉、地域づくり・地域運営(行政ニーズの集約や合意形成)といった多様なシーンで実施されている。幅広い分野に活用できるワークショップだが、どのような種類があるのか、代表的なタイプを整理してみよう。

モノづくり

老若男女問わず参加しやすいのが「モノづくり」系。文字通り、個人やグループ、あるいは参加者全員でモノを作るワークショップだ。相談したり、協力したり、他の参加者がいることで創造力・表現力が刺激される。工芸品製作、インテリア小物作り、キャンドル作り、リース作りなど多種多彩。

アート

参加者たちがそれぞれの感性を生かして取り組むアート系ワークショップ。みんなで大きな絵を描いたり、自由な発想で巨大段ボール工作をしたり、楽器演奏を楽しんだり…。小さな子どもたちも参加しやすく、親子ターゲットのイベントで多く実施されている。

スポーツ・運動

スポーツ・ダンスなど体を動かすワークショップ。運動系ワークショップは、一緒に汗を流すことで参加者たちの親密度が増す。ダンス、ヨガ、体操、ウォーキングなどテーマも多彩。

ビジネス

ビジネス分野の課題を設定したワークショップ。「キャッチコピー作り」「新商品の企画立案」など、参加者同士で議論をしながら作り上げていく。ビジネス系ワークショップは企業の研修やセミナーの中で実施することが多い。グループに分かれて共通の課題に取り組むことで、組織の人間関係が円滑になり、コミュニケーションの活性化が期待できる。

仕事に役立つテーマに加え、趣味領域も含めたさまざまなワークショップの専門講師をオフィスに派遣してくれるサービスもあり、従業員の交流促進、また福利厚生として人気がある。

地域・社会

地域や社会の課題について、解決のヒントを探るワークショップ。地域運営に関する話し合いの手法として行政も取り入れている。当事者となる住民・企業・行政が意見を交わし、一方的でない双方向の議論ができるのがワークショップの利点だ。テーマは、環境、防災、福祉、まちづくり、地域運営ほか。住民参加型で地域の防災マップを共同作成する取り組みなどが各地で実施されている。

子どもたちの知的好奇心を刺激するモノづくり系ワークショップ

ワークショップイベントの特徴とメリットを確認しよう

ここからは、ワークショップの特徴と主なメリットを具体的にみていこう。

参加者の満足度向上

創作系ワークショップなら成果物が残り、体を動かすワークショップなら自分の体に記憶が残る。テーマを持った場づくりがされており、参加者同士の交流がしやすくなる。見る・聴くといった要素に、体験・コミュニケーションが加わることでイベントが立体的になり、参加者の満足度アップが期待できる。

参加者の意見を得られる

ワークショップは複数の参加者がグループに分かれ意見を交わす場。各々が能動的に参加しているため、本音の意見が交わされることが多い。主催者としては商品やサービスのマーケティングの場にもなり、今後の事業展開やサービス開発に活かせる意見を得られることがある。

プロモーション効果

ワークショップは体験が主になるため、商品やサービスを実際に使ってもらうことができる。広告では伝えにくいモノや、プロモーション予算が少ないモノも、実体験(タッチ&トライ)を通して「面白い」「便利」といった特長を訴求できる。また、他の参加者が体験している様子がプロモーションとして機能することも期待できる。

参加者と主催者の交流

自社商品やサービスをテーマにすれば、参加者のワークショップでの体験は、ユーザーテストの場と捉えることができる。実際に使ってみての疑問や要望をリアルタイムで汲み取れるほか、その場で回答することができるため、参加者の満足度向上にもつながる。ユーザーの生の声は商品開発のヒントになるだろう。

参加者の関りが深化

イベント参加者の意識を“自分事”にするのはなかなか難しい。例えば、町おこし目的のイベントで、地域の素晴らしさを一方的にメッセージしたとしても関心の高い人にしか届かないだろう。ワークショップは体験を伴うイベントのため、関わり方が深くなる。他の参加者との交流を通してさらに理解が進み、興味関心を高めることができそうだ。

ワークショップのキモは参加者の体験とコミュニケーション

ワークショップを成功させるためのポイントをチェック

ワークショップを成功させるためには、いくつか留意すべきポイントがある。参加者に喜んでもらい、主催者もメリットを感じられる取り組みとなるよう事前に確認しておこう。

目的とゴールイメージを設定

イベント全般に言えることだが、開催する目的とゴールを明確にしておくことが大切。目的は、施設や店舗の集客、町おこし、企業の福利厚生、文化体験の機会創出など。ゴールイメージは、ワークショップを通してどうなりたいかということ。参加者に何を感じてもらい、その後どう行動してもらいたいのかを想定することで、ブレのないプログラムを組み立てられる。

ファシリテーターを置く

ファシリテーター(facilitator)とは、まとめ役、進行役のこと。ワークショップは体験型イベントであり、参加者の行動や発言の自由度が高い。自由闊達な雰囲気はメリットでもあるが、時としてテーマから外れたり、停滞したりすることがある。このような状況を回避するために、参加者たちをサポートし、創造的な活動を促進するのがファシリテーターの役割。ワークショップにおけるファシリテーターは、その手腕により成否が決まると言われるほど重要なものだ。

参加者主役の環境づくり

ワークショップの主役は参加者。主催側には参加者たちの能動的な行動を促す環境づくりが求められる。参加者同士の活発な意見交換や交流が行われるよう、会場の選定、席の配置、時間配分、グループワークの人数などを考慮する必要がある。一般的にグループワークを行う際の1グループの適正人数は5人程度と言われているが、ワークショップのテーマやワーク内容によっても異なる。

ワークショップの成功に向けては、ワークショップの企画運営を行っているイベント会社に相談するのがよいだろう。開催ノウハウが蓄積されており、経験豊富なファシリテーター・講師を手配してくれるため安心感がある。女性向けワークショップが得意な会社、子ども向けアートイベントの専門会社、マニアックなテーマのワークショップ・イベント会社など、得意なジャンル・ターゲットも多彩だ。ワークショップの開催をまるごと委託できる会社もあるのでチェックしてみよう。