イベントコラム

自治体や大手企業も注目!周遊型イベントはなぜ人気?

周遊型イベントが人気だ。レジャー施設やショッピングセンター、街なか・地域、観光地などを舞台に、それぞれの場所に合ったストーリーや世界観が展開する体験型のエンタテインメント。好きな時間に、友達同士やカップル、家族で気軽に参加でき、ゲーム感覚で楽しめることが人気の秘密だ。

鉄道会社やバス会社が沿線を舞台に実施したり、街なかを回遊してもらうために地域ぐるみで実施したり。アニメ作品、企業、商品とのコラボ・タイアップのほか、自治体での採用も増えている。周遊型イベントの種類、実施するメリット、留意すべきポイントなどを詳しく見ていこう。

各地で数多く開催されている人気の「周遊型イベント」とは?

周遊型イベントとは、特定エリア内のチェックポイントをめぐってゴールを目指すイベントのこと。ゴールは特定の場所に限らず、謎の解明だったり、宝の発見だったり、ミッションの完遂だったり。実際にスポットを訪ね歩くことから「リアル体験型イベント」に分類され、ゲーム性があって楽しみながら参加できるため、年齢性別を問わず人気のイベントとなっている。

周遊型には街歩きイベント、食べ歩きイベントもある。チケット制で複数店舗を回れる「食べ飲み歩きイベント」、試飲・見学をしながらの「酒蔵めぐり」などがよく知られている。

周遊型イベントの種類 ~小規模施設から広域エリアまで対応

周遊型イベントにはさまざまな種類があり、屋内・屋外を問わず、また小規模な施設でも、複数自治体をまたぐような広域エリアでも実施することが可能。自分の都合のよい時に参加できる気軽さも周遊型イベントの特徴だ。コロナ禍の中では、一度に多くの人を集める必要がない、いわゆる3密を回避できるイベントとして注目された。代表的な周遊型イベントの種類を見てみよう。

謎解きイベント

謎解きイベントとは、参加者がストーリーの主人公となり、謎を解きながら物語を進行させていく体験型イベントのこと。情報を集め、歴史をひもとき、手がかりをつなぎ合わせて謎の解読に挑戦。謎が解けたときの達成感が参加者たちを惹きつけており、謎解きゲームの専門施設ができるほど人気がある。

周遊型の謎解きイベントは、参加者が同じ時間・場所に集まるのではなく、それぞれが好きな時に参加する。事前に入手した謎解きキット(参加キット)を手に、チェックポイントを巡って謎を解き、すべて解けたらゲームクリア。謎解きを通じて、その場所の歴史にふれたり、興味深いエピソードに出会ったり、隠れたスポットを発見したり…。レジャー施設、商業施設、観光地などで開催されているほか、鉄道会社やバス会社が沿線地域を舞台に行う例もある。

宝探しイベント

周遊型の宝探しイベントは、参加者が「宝の地図(参加キット)」を頼りに「お宝」を探すゲーム。施設や地域を舞台に数多く行われている参加体験型のイベントだ。例えば、観光案内所で宝の地図を入手し、地図に示されたポイントに行って宝箱を探す。宝箱の中のキーワードをメモして次のポイントへ。すべてのキーワードを揃えて指定の場所に報告すると賞品がもらえたり、抽選に参加できたり。トレジャーハンターになった気分で楽しみながら施設や地域をめぐることができる。宝探しイベントや謎解きイベントは参加キットを有料販売するケースも多い。

非日常感が楽しめる謎解きイベント・宝探しイベント

街歩きイベント

特定のテーマのもと、街の中を歩いて楽しむイベント。ガイドツアーや、施設・店舗をめぐってスタンプを集めるスタンプラリーが代表格だ。スタンプラリーは、景品などの特典を用意すると参加者が集まり、回遊率を高めることができる。見学・試飲・買い物ができる「酒蔵めぐり」や、着物で街歩き(着物レンタル)、また古くから各地で行われている「七福神めぐり」も街歩きイベントのひとつといえるだろう。ドラマや映画、アニメのロケ地・舞台を訪ねる、いわゆる「聖地巡礼」は今や完全に定着した。街歩きガイド、モデルルートの地図を配れば、周辺の店舗や施設への立ち寄りも期待できる。

飲食店めぐりイベント

ご当地グルメなどをテーマに行われる食べ歩きイベント。ひとつの会場に飲食屋台を集めるフードフェスとは異なり、街や地域を会場に、参加者自身が実店舗を回って楽しむのが基本スタイルだ。複数の飲食店をチケット制で食べ飲み歩きできるイベント「街バル(バル街)」は各地で盛んに開催されている。

東京月島の「もんじゃ」、静岡県富士宮の「富士宮やきそば」など名物を出す店を紹介するマップは各地にあり、とくに土地勘のない旅先では重宝する。イベントとして開催する場合は、限定メニューを出したり、食べ歩きができるようハーフサイズの料理を用意したりすることを考えたい。

学習イベント

社会問題やSDGs、歴史、文化などをテーマに、学習要素を盛り込んだ周遊型イベントを実施できる。博物館内を回遊し展示物を手がかりに謎解きに挑戦したり、動物園や水族館で動物にまつわるクイズ仕立てのスタンプラリーに参加したり。ちょっとしたイベント要素を加えることで、子どもたちが楽しみながら学ぶことができる。

周遊型イベントの特徴と利点 ~イベント主催者の視点でチェック

イベント主催者の視点で、周遊型イベントの特徴・利点を整理してみよう。

汎用性がありアレンジしやすい

謎解きや宝探しはイベントのひとつのフォーマット(型)といえる。シナリオを変えることであらゆる施設や地域に適合させることができる。会場となる施設のテーマに沿ってシナリオを組み立てたり、地域の史実や伝説をもとにシナリオを作成したり。参加者のターゲティングもしやすい。

アニメ作品やアーティスト、企業、商品とコラボした謎解きゲームが盛んに開催されている。汎用性が高いイベントフォーマットであり、コラボ、タイアップなどの展開がしやすいのも特徴だ。

人の動きを作り出せる

周遊型イベントは、シナリオによって参加者の動きを作り出すことができる。例えば、ショッピングセンターなら、普段はなかなか導線が作りずらい場所でも、チェックポイントにすれば参加者を呼び込める。観光地の見落とされがちな隠れたスポットも、シナリオに組み込むことで参加者が訪れてくれる。街歩きをしながらの立ち寄り効果も期待できる。

テーマ性のある街歩きイベントが人気。周遊型イベントは人の動きを作り出せる

集客を長期スパンで考えられる

謎解きや宝探しイベントには一定のファンが存在しており、SNSでも話題になりやすい。周遊型イベントは単日開催のものは少なく、短くても数日、長いものは数ヶ月~年単位のものもある。都合のよい時に参加できることから、ピークを作らず比較的長期戦で参加者を集められる。また、ゲーム感覚で参加でき、大人も子どもも楽しめるため、友達同士、カップル、ファミリー層の参加が期待できる。

参加者の記憶に残る

周遊型イベントは、ただ見るだけのイベントとは異なり、実際の行動を伴うため参加者の記憶に残りやすい。謎が解けた時の高揚感、宝探しのワクワク感、ミッションをクリアした時の達成感…。行動と対になった感情は長く心に残る。参加キットやちょっとした賞品などもよい思い出になりそうだ。

密集状態を作らない

周遊型イベントは、一般的に参加者が分散することから密集状態を作らない。密集による事故の危険性も低い。コロナは落ち着いてきたが、今後のイベントスタイルのひとつとして定着するだろう。

運営コストのコントロールがしやすいのも周遊型イベントの特徴といえる。例えば、地域で実施する場合は、チェックポイントを施設や店舗に協力依頼することで運営費用を抑えられる。謎解き・宝探しイベントでは無人にすることもできる。一方で、周遊型イベントのキモとなるシナリオの品質、参加キットや告知表現のクオリティには十分な注意を払うことが必要だ。

周遊型イベントを開催するために ~成功のために大切なこと

周遊型イベントを企画~実施する際に準備するもの、留意する点を確認してみよう。

周遊のためのシナリオ

周遊型イベントに不可欠なのがシナリオだ。参加してみたくなるようなテーマや、没入できるストーリー設定が求められる。謎解きや宝探しイベントなら、ストーリーの中で参加者にどんな役柄を演じてもらうのか、目標・ミッションは何か、そこに向かうためのステップをどうするか…。イベントの目的、会場となる施設や地域の特性を踏まえつつ、楽しみながら参加できるシナリオを作成する。

攻略の難易度や所要時間も考慮しよう。子ども連れ・ファミリー層がターゲットなら、小学生でも楽しめる内容に、謎解きファンも取り込みたいなら作り込んだシナリオが必要となる。初級・中級・上級など難易度を選べるイベントもある。ストーリーやロジックが秀逸なイベントはSNSで話題になる。

所要時間は数十分で終わるものから、一日では攻略できないものまで自由に設計できる。会場の広さ、途中チェックポイントの位置関係、営業時間などを考慮して設定しよう。参加キットや告知に、標準的な所要時間を示すことも必要だ。

周遊型イベントの成功のキモは、物語の世界観を伝えるシナリオの質。自分たちで作成するのはハードルが高いので、専門の事業者に依頼するのがよいだろう。謎解き・宝探しイベントの企画制作会社なら、多くのイベントを手がけており、ノウハウも持っているので安心できる。予算の制約などでオリジナルシナリオの作成が難しい場合は、汎用的なパッケージ版を用意している会社もあるので相談してみよう。

周遊型イベント成功のためにはしっかりとしたストーリー設計が必要

参加者の安全対策

イベントにおいて参加者の安全対策は最も重要なこと。標準時間内に無理なくまわれるように、また事故が発生しないようにルートづくりには注意を払おう。危険な場所にはチェックポイントを設けない。事前にコースを歩いて細部までチェックする必要がある。

参加施設とスタッフ

イベントを企画・準備する際に忘れてはならないのがチェックポイントの運営設計だ。途中チェックポイントとなる施設や店舗、協力者の確保が必要となる。イベントの目的や内容、ルール、マニュアルを共有し、掲示物、オペレーションなどの協力を要請する。地域おこしイベントでは、複数の市民が関わることになるが、サポートしてくれるスタッフを含めて一体感を持って参加者を迎えたい。

イベント告知・SNSの活用

参加者を増やすためにはTwitterほかSNSの活用が重要。参加してくれた人がSNSで発信しやすいように、ネーミングや制作物のビジュアルにはこだわりたい。現地に“映えスポット”を用意するのも手だ。

昨今、イベントの分野でもデジタル化が進んでいる。かつてスタンプラリーといえば、紙の台紙にスタンプを集めるのがスタンダードだったが、現在はスマホを使うものが多くなった。コロナ禍を経て、謎解き・脱出ゲームは自宅で楽しめるオンライン版が多数開催されている。

一方で、デジタルツールを活用しながらも、現地に出向いて楽しむリアル周遊型イベントには、他には代えがたい魅力がある。施設や店舗内で楽しんでもらうために、また地域を周遊してファンになってもらうために、周遊型イベントの開催を検討してみよう。