イベントコラム

これだけはおさえておこう 会場の選び方&下見のポイント

イベント仕事人に聞く

株式会社ホットスケープ

代表取締役社長 前野 伸幸 さん

表彰式や社員総会、会社説明会といった企業イベントの企画・運営を数多く手がけるホットスケープ。1991年の創業以来、主催企業からの直接受注をメインにビジネスを進めています。イベントの企画段階から準備、当日の運営、終了後のアフター業務まで、ワンストップでサービスを提供。多岐にわたるイベント制作の経験を生かし、ホールやカンファレンス会場といった施設のコンサルティング業務も行っています。つねに主催企業の担当者の側に立ち、最初から最後まで寄り添うようにサポートするスタイルが顧客からの信頼を得ています。

まずはゴールの設定。それに向かってすべてを決めていく

私たちホットスケープは、様々な企業イベントの企画・運営に携わっています。イベントを実施する際に決めなくてはならない要素はたくさんありますが、基本的なところでは、目的とゴールイメージ、日程、会場、参加者、内容、演出などが挙げられます。「ゴールイメージ」というのは、別の回でもふれましたが、「イベントを通してどうなりたいのか=何をもって成功とするのか」ということです。ゴールイメージを企画の早い段階で定義し、これに向かってすべてのことを決めていきます。成功の状態を定義しないと、ただ漫然とイベントを実施しただけ、ということになりかねませんからここは注意してください。

さて、今回はイベントの企画要素の中でも、会場選びに焦点を当てて、選定する際の考え方や留意点をひとつずつ確認していきたいと思います。

会場選びは様々な要件、制約の掛け合わせ

会場の選定はイベントの成否に大きく影響します。まずは実施するイベントテーマに合った会場を選定すること。会議なら会議に適したところを。機密事項を含む会議をオープンなスペースで行うことはできませんよね。防音性をチェックしましょう。表彰式なら豪華とまではいかずとも、それなりに厳かな雰囲気の会場がよいでしょう。これらは比較的考えやすい要件といえます。

会場選定にあたっては様々な制約があります。日程が決まっていて動かせない場合には、当然ながらその日に空いている会場を探さなくてはなりません。地理的な制約はもちろん、アクセス、予算、収容人数、必要な設備の有無など、多くの条件を掛け合わせてベストな選択を目指します。

ここでとくに注意が必要なのが予算です。安い使用料金につられて借りたら、実は必要な設備が整っておらず結局高くついた、ということがよくあります。ネット接続環境がなく別工事となった、音響機材がないため別途レンタルすることになったというようなケースですね。会場費だけに限りませんが、イベントの予算管理については単品でのコストを考えるのではなく、目的を達成するためのトータル・コストを常に意識してください。

会場の概要や図面類を参考に候補を絞り込む

会場を探す際には、インターネットで検索する方が多いでしょう。用途やエリア、参加人数、予算などから候補を絞り込んでいきます。会場のウェブサイトには、平面図のほか、スクール形式・シアター形式といったサンプルレイアウト、付帯設備の一覧・料金表、搬入・搬出の手引きほか各種の資料が用意されていますので、これらを参考に検討してください。電源が必要な機材を使用する際は電源図も確認します。図面や資料がウェブサイト内に用意されていない場合は別途取り寄せる必要があります。私も仕事柄これら図面をよく利用するのですが、PDFなどで参照できるようにしておいてもらいたいですね。

候補を絞り込んだら、詳細を会場に確認したり、下見に出かけたりします。会場選びや予約については、イベント会社に代行してもらうこともできますから、不安なら相談してみてください。私たちホットスケープでも会場の選定からお手伝いが可能です。

男女ペアで出かけよう。会場下見のポイントは?

候補が決まったら会場を下見しましょう。遠隔地の場合など難しいケースもあると思いますが、私たちはできる限り行うようにしています。設備や諸条件を直接確認できるのはもちろん、事前に見ておくことで、イベント当日にあわてることなく、余裕を持って対応できます。また、ウェブサイトや電話による情報収集ではわからなかった問題点を発見できることがあります。最初は何をチェックすればよいのかわからないかもしれませんが、複数の会場を見比べることで徐々に確認すべきポイントがわかってきます。

下見の際のおもなチェック項目を整理しておきますので参考にしてください。

  • アクセス… 最寄駅などから近いに越したことはありませんが、場所がわかりやすいというのも大切です。もしわかりにくい場合には、道中に案内スタッフを置くなどの対応が必要になる場合があります。
  • キャパシティ… 収容人数が参加予定者数に対して無理がないかを確認してください。
  • 借用時間… 借用時間前に機材などの搬入が可能か否か、終了時間後に撤収作業が可能か時間内に完全撤収かなどを現場で確認してください。会場によって異なるため注意が必要です。
  • 使用料金… 金額のほか支払い時期や延長料金、キャンセル料もその場で確認するとよいでしょう。
  • 機材・備品… 使用可能な機材や備品の確認(有料か無料かも)。プロジェクタを使用するならスクリーンの大きさと会場の広さの関係をチェック。PCやプレイヤーとの接続テストをしておくと安心です。
  • 演出耐久力… 演出に耐えうる会場の能力を私は「演出耐久力」と呼んでいます。照明や音響、ステージ、天井高などが実施したい演出に対応可能かどうかをチェックしてください。
  • 携帯電話… 少なくとも国内大手3社の電波状況を確認しておいてください。
  • ネット環境… 無線LAN環境が必要なら同時接続人数なども含めて確認を。会場に設備がない場合は、設置工事が必要です。
  • 導線… 参加者の導線を確認しましょう。館内での場所がわかりずらい場合は、会場に相談し案内表示などを検討。万が一の際の避難経路の確認も。VIPに参加していただく場合には、一般とは別の“裏導線”が確保されていると安心です。また、必要な場合は控室なども確認しておいてください。
  • 搬入・搬出経路… 機材などの搬入経路を確認しておきましょう。経路だけでなく寸法のチェックも大切です。だいぶ前の話ですが大きな機材が搬入口から入らず困ったことがありました。駐車場の場所、利用時間の確認もお忘れなく。
  • 飲食… 飲食を伴うイベントの場合は対応状況の確認を。会場がホテルやレストランでなければケータリングなどの手配が必要。ケータリングは指定業者が決まっている場合があります。
  • クローク… 会場に設置されているか、なければ設置するスペースがあるかをチェック。
  • 喫煙所… 出席者にもよりますが長時間のイベントでは考慮する場合も。設置されていない場合には、事前にその旨を参加者に伝えておくとよいでしょう。

これらのほかにも次のようなチェックポイントがあります。

セミナーや講演会終了後に引き続き同じ会場で立食形式の懇親会を行うケースがよくあります。この場合は、参加者にいったん退室してもらい、会場転換ののち再入室してもらいます。イスや机が素早く収納できるか、参加者に待機していただくロビー、ホワイエなどのスペースは十分かなどのチェックが必要です。

うっかり見落としてしまうのがトイレです。お客様の出入りが分散する展示会のようなイベントなら問題ありませんが、セミナーや説明会の休憩時間などは利用者が集中します。参加者数に比べてトイレの数が少ないようなら休憩時間を長めに取るなどの配慮が必要となります。違うフロアのトイレを案内することなども必要になるかもしれません。また、会場を下見する際に、例えば男性だけで行くと女子トイレの様子が確認できません。逆もそうですね。そこで私は、可能ならば男女ペアで下見に行くことをおすすめしています。

今回はイベント会場の選び方、下見のポイントについて確認しました。イベント成功のひとつのキーは会場選びです。少しでもみなさんの参考になれば幸いです。

株式会社ホットスケープ

施設コンサルティング、イベント企画・運営のプロフェッショナル集団