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マラソン大会・スポーツ・催事… 参加者を守るイベント救護の仕事

2016年4月7日

佐藤武諭毅 イベント仕事人に聞く
佐藤レスキュープラン 救急コンサルタント・救急救命士
代表 佐藤武諭毅(さとう・たけゆき)さん
福島県郡山市に拠点を置く、イベント救護を専門とする事業者です。マラソン大会や音楽ライブといった大規模イベントから、子どもたちのキャンプ・修学旅行まで、あらゆるイベントに24時間体制で救急救命士(医療従事者)を待機させ、急病人・体調不良者・怪我人の緊急対応を行います。また、救護活動はもちろん、救護に至る前の“予防”に力を入れており、イベント参加者の楽しい思い出作りをサポートしています。

救急車の現場到着所要時間は全国平均で8.6分、病院収容までは同39.4分(消防庁調べ・いずれも2014年)――。不特定多数の人が集まるイベントでは、参加者の怪我や急病など予期せぬ事態が発生することがあります。とくに心停止をはじめとする緊急時には、救急車が到着するまでの対応が傷病者の命を左右することになります。そこで活躍するのが、医療従事者である救急対応のプロ、救急救命士です。

今回は、イベント救護の専門事業者「佐藤レスキュープラン」の代表を務める佐藤武諭毅さんに、「主催者・運営者が知っておくべきイベント救護」をテーマにお話しをうかがいました。

すぐに駆け付けられるようAED(自動体外式除細動器)を携行する救護スタッフ

─佐藤レスキュープランさんの事業内容について教えてください。

イベントにおける救護業務のほか、商業施設や体育館、レジャー施設などの救護室の受託運営を行っています。一般企業・学校・介護施設などでの心肺蘇生法の講習会も実施。指導者の手配はもちろん、機材や修了証ほかすべてご用意します。また、アーティストの全国ツアー、テレビロケ、CM撮影への同行といった、芸能人・著名人、関係者のVIP救護もおまかせください。そのほか、救急救命士国家試験対策のための通信教育事業も行っています。

救急経験のある医療スタッフをイベント会場に配置

─「救急救命士」とはどのような役割の人ですか?

救急救命士は、救急車などに乗って傷病者のもとへ駆けつけ、救急現場の状況を評価し、傷病者の観察、処置を行いながら、病気や怪我に応じた医療機関へ搬送する役割を担う、医療資格で唯一の病院外専門職です。

救急救命士が実施する救急救命処置は多岐にわたります。病院のように専門がなく、心肺停止対応はもちろんのこと、交通事故などの外傷、小児領域・産科領域・精神科領域ほか、様々な傷病者に対応する必要があります。

救急救命士の多くは消防署救急隊員として勤務しています。最近では社会的な要請もあって、民間で活躍する救急救命士も増加しており、ユニバーサル・スタジオ・ジャパン(R)、東京スカイツリー(R)などにも常時配置されています。

─「イベント救護」とは具体的にどのような業務ですか?

当日の現場待機だけでなく、救護計画の作成や消防・病院へのあいさつ、イベントスタッフへの指導など、救急時に最善の対応ができるよう、あらゆることを想定した事前準備を行います。

救急時には、観察・処置を行い、救急車の要請をするかどうかの判断をします。救急対応だけでなく、傷病者を出さないための予防巡回も大切な業務のひとつです。また、怪我・病気をされた方のご家族への連絡、主催者との対応についての協議、アドバイスもさせていただきます。

─イベントにおける救急・救護の現状について教えてください。

大勢の人が集まるイベントでは、万が一に備えた救護体制の確保が求められますが、小規模なスポーツ系大会・イベントなどでは救急救命士(医療従事者)が配置されていないことがあります。あるいは、参加人数に対して配置数が少ないというケースが見受けられます。ボランティアの医療スタッフ、派遣の医療スタッフを配置している場合もありますが、救急対応やイベント救護に慣れていないと不安です。やはり救急経験がある医療スタッフを配置するのがよいでしょう。

また、救護計画は事前に必ず作成してください。計画がないまま不測の事態が発生すると現場が混乱します。スタッフが効率的に動けず、救えるはずの人命が失われることがありますから。

救護計画を整備し、救急経験のあるスタッフを配置する、これはとても大切なことです。

不特定多数の人が集まる大規模イベントには救護スタッフの配置が必要です

傷病者に対する救急対応を行い、安心を支えるイベント救護

─イベント救護の必要性とは?

1秒でも早い救急対応が傷病者の命を救うことになります。また、イベント現場に救急救命士が待機していることで、主催者・参加者の安心にもつながります。

私たちが関わった2015年のマラソン大会で心肺停止事案が発生し、待機していた弊社の救急救命士と関係者で対応しました。本人は、早期発見・早期心肺蘇生処置・早期AEDにより、後遺症もなく社会復帰を果たし、無事日常の生活に戻られました。日頃から心肺停止時の蘇生訓練を行っている救急救命士だからこそ、素早く適切な対応ができたのではないかと思っています。

従来は倒れた方への対応が「救護」でしたが、弊社では救護に加え「予防」に力を入れ、熱中症予防などの呼びかけ活動も積極的に行っています。

─緊急時には救急車を呼べばよいのでは?

イベント時には周辺道路の混雑・封鎖、多数の参加者・見物人により、救急車の到着までに通常よりも時間がかかることが想定されます。心肺停止などの場合には、救急車が着くまでの対応が状況を大きく左右します。この数分間が非常に大切なんです。ここで的確な救命措置を行うのがイベント救護スタッフの重要な任務です。

本人やご家族はもちろん、重度の傷病者・死者を出してしまった際の主催者のダメージは甚大です。緊急時の対策・対応のいかんによっては訴訟問題に発展することもあります。

マラソン大会をはじめとするイベントでは、参加者自身による健康管理が前提とはなりますが、やはり人の命はひとつ限り。救急対応に精通した医療従事者を配置する必要があると思います。

イベント救護用の機材を備えているため、主催者側で用意する必要がありません

イベントに特化した救護チームで参加者の安全を守る

─佐藤レスキュープランさんはなぜイベントに着目したのでしょうか?

従来は、ボランティアで周辺医療機関のお医者さん、看護師さんがイベントの現場に入ったり、あるいは派遣という形で救護担当者が会場に待機したりというのが主流でした。この形ですと、救護のノウハウやデータを次年度以降に活かすことが難しく、また、主催者と救護担当者との間に“ズレ” が生じ、イベントの進行や救急対応がうまくいかない場合があるという話を聞いたことがありました。また、救護を担当する方が救急対応訓練を受けていないケースがあり問題が発生しているということもわかりました。

それならば、救急隊として活躍する救急救命士からなる専門の救護チームを編成し、イベントに特化した事業展開を行えばよいのではないかと思いました。

当然ですが、病院外で発生した事故・急病の場合には救急車を呼びます。さらに救急車が到着するまでの間に適切な処置ができる救急救命士がイベント会場にいれば、参加者・主催者にとって心強いのではないかと考えたのです。

─なぜ看護師さんではなく救急救命士なのですか?

看護師さんは、様々な専門分野(内科・外科・皮膚科など)に分かれて勤務している場合がほとんどです。一方で救急救命士は教育の段階から救急対応に特化した訓練を受けます。また、救急救命士は病院外で活動していますので、病院にある検査機器がなくても症状・バイタルサイン(呼吸数・脈拍数)などで病気や緊急性を予測することを得意としています。とくに屋外での搬送方法や専用の救急資機材の取り扱いは救急救命士のほうが慣れています。消防機関との共同活動の際にも、消防教育を受けている救急救命士だからこそ流れがわかり、迅速な救護活動を行うことができます。さらに弊社では救急技術の向上のために、消防職員が受講する様々な救急講習に参加し、専門のトレーニングを積んでいます。

─イベント救護はどのようなイベントに必要ですか?

そうですね、とくにマラソン大会などのスポーツイベントでは、心肺停止や怪我のリスクがありますので、救護体制は必須だと思います。また、不特定多数の人が集まるイベントでは、様々な持病を持った方も参加します。火災事故、将棋倒しなどの転倒事故、参加者だけでなくスタッフの事故もありますので、可能な限り医療従事者を置くことをおすすめします。

マラソン大会などの救護ではマウンテンバイクを使うことも

受け身だった救護を「予防」という攻めの姿勢に変えていく

─佐藤レスキュープランさんにイベント救護を依頼する際の流れは?

まずは電話、メールにてご相談ください(電話・問い合わせフォームはこちら)。その後、担当者よりご連絡します。過去の救護体制や傷病者発生数をお聞きしたうえで、最適な救護体制をご提案させていただきます。当然ながらイベントには予算が付き物ですので、主催者様のご予算を考慮しながら検討します。

救護計画は、一般のスタッフの方にもわかりやすいものを事前に準備しますのでご安心ください。その後、各種の調整を経て、イベント当日の配置・活動となります。イベント終了後は救護報告書を作成・提出します。次年度以降の救護体制検討時にご活用いただければと思います。

これまでに携わった多数のイベント事例をもとに、様々なアドバイスもいたしますので、どうぞお気軽にお問い合わせください。

会場内を警戒巡回し体調不良者の早期発見を行います

─活動にかける思いや今後の展望について教えてください。

私たちは、その日限りの救護という考えではなく、主催者様とともにイベントを作り、そして長く支えていきたいと思っています。そのためには当日の救護はもちろん、開始前・終了後にお渡しする資料や報告書も大事だと考えています。

弊社にご依頼いただいた主催者様から、「今までは患者さんの発生数を把握していなかったが、今回はよくわかった」「使わない物品がこんなにあったなんて知らなかった。いただいた資料を参考に本当に必要な救護物品を揃えていきたい」「主催本部と救護担当者との一体感がありとてもよかった」といった評価をいただきとてもうれしく思いました。

私たちは救護担当であると同時にイベントのスタッフだということを常に意識し、接客態度や言葉遣い、身だしなみなどにも注意を払いながら活動しています。

また、従来は救護の概念になかった「救護員による予防」という部分も前面に出して、受け身だった救護を攻めの姿勢に変えて挑んでいきたいと考えています。

今後も救急資機材のさらなる充実や救急救命士のスキルアップのための研修、イベントスタッフとしての接客研修などを引き続き行っていきたいと思います。また、救急車を呼ぶほどの重症ではないが、歩けない・動かせない患者さんのために、消防署と同等基準の高規格救急車(救急救命士が乗車し活動するための大型救急車)を導入し、各種イベント救護へ投入する予定です。

これからも主催者様、参加者の皆様の安心安全を支え、弊社が必要だと言われるような活動を心がけていきます。イベント救護をご検討の際はぜひご相談ください。