イベントコラム

ハードパンチャーしんのすけの大道芸人を呼んでみよう! 第4回:まちの賑わいづくりに大道芸を

連載・ハードパンチャーしんのすけの大道芸人を呼んでみよう!

イベント仕事人に聞く 連載

有限会社にぢゅうまる企画

代表取締役 矢熊 進之助 さん

受験雑誌に掲載されていたピーター・フランクル氏(数学者・ジャグラー)のコラムに触発されてジャグリングを始める。東京大学進学後はジャグリングサークル「マラバリスタ」に所属しジャグリングを学ぶ。ジャグラーとしての活動を行いながら、研究者を目指し東京大学大学院博士過程へ進学。しかし、ジャグリングの魅力から逃れられず進路を変更し、2002年からプロジャグラーとしての活動を開始。東京都ヘブンアーティスト、KOTO街かどアーティスト。ジャグリングショー、ジャグリング講師の活動に加え、代表を務めるにぢゅうまる企画では、大道芸イベントの企画・運営を行っている。

まちの賑わいづくりに大道芸を

前回は、大道芸イベントの様々なパターンと活用方法・効果を概観しましたが、この回では、私たちが実際に手がけたイベントをご紹介します。大道芸イベントの姿をより具体的に、臨場感を持ってお伝えできればと思います。

まちの賑わいづくり 深川美楽市(ふかがわびらくいち)

にぢゅうまる企画は、東京の下町、江東区(こうとうく)の深川(ふかがわ)と呼ばれる地域にあります。このエリアで最近注目されているのが、東京メトロ半蔵門線と都営地下鉄大江戸線が乗り入れている「清澄白河(きよすみしらかわ)」。江戸の面影を色濃く残しつつ、アートギャラリーやサードウェーブコーヒー店といった現代的な施設や店舗が点在する魅力的なまちです。にぢゅうまる企画は、この清澄白河の商店街を会場に開催されるイベント「深川美楽市(ふかがわびらくいち)」で大道芸を行っています。

深川美楽市は、「うつくしいもの、たのしいもの、なんでも市」をテーマに、地元の手作り作家や飲食店が中心となって出展する青空市。開催当日は、下町の商店街に濃密な空間が出現します。

2015年5月10日に実施された第12回深川美楽市では、12組のパフォーマーが集結。大阪、静岡、岐阜など、遠方からの駆けつけ組も含め、全国を舞台に活躍するパフォーマーたちがイベントを盛り上げてくれました。

大型連休明けの日曜日、イベント当日は晴天! 車両通行止めにした商店街の2区画に、個性豊かな出店が並びはじめます。
大道芸のショーポイントはこの区画の両端です。準備が整うと、いよいよショーがスタート。このイベントを楽しみに足を運んでくれたひと、地元の子どもたち、休日を楽しむ家族連れ、そして、たまたま通りかかった街歩きをする人々が立ち止まり、ショーに参加していきます。

何だろうと思って足を止めてもらう――。イベントへの興味を引き出すフックとなるのが大道芸です。パフォーマーたちのショーが、通りに並ぶ様々な出店への誘導役となり、深川美楽市の密度がぐっと増していきます。そして、出店の間を縫うようにして、スタチューや手回しオルガンなど、「アトモスフィア」をつくるパフォーマーが現れて、イベント空間を「非日常」へと変化させます。ハプニング的なアトモスフィアパフォーマーたちとの出会いがイベント会場の空気を和ませ、そして、そこに集う人々の距離を縮めていくのです

歓声や笑い声、たくさんの笑顔、交流が広がる大道芸イベント

こうしてスタートした深川美楽市。大道芸と出店が一体となり、徐々にイベントの“場”ができあがっていきます。気持ちのよい初夏を思わせる陽気の中、地元を中心とした飲食店の出店による、おいしい食べ物、飲み物でリラックスした雰囲気があたりに漂います。

会場の空気があたたまり、参加者たちの心の距離が縮まるにつれて、大道芸も盛り上がりをみせます。日頃は静かな深川の小さな通りのあちこちから歓声や笑い声が響いてきます。そして、たくさんの笑顔が道行くひとたちの間に広がっていきます。

観客との距離が近いのが、大道芸の特徴であり、魅力のひとつです。ショーが終わったあと、観客とパフォーマーが言葉を交わし、交流を深めることもしばしば。そんな出会いや楽しい経験がリピーターを呼び、回を重ねるごとにお客さんが増えていく…。これが「大道芸フェスティバル」というイベント形式の強みといえます。

イベントを運営していると、圧倒的な熱気の中で、あっという間に一日が過ぎていきます。終了後に、会場となった通りを眺めると、ついさっきまでの賑やかな光景が夢だったかのような感覚を覚えます。
体に残る熱の余韻。その余韻の中で、楽しい時間を一緒につくり上げてくれたみんなへの感謝とともに、またこの場所に足を運んでくれたらなぁ、という強い思いが胸をよぎります。

こうして、深川美楽市は無事に幕を閉じたのでした。

大道芸フェスティバルの魅力

深川美楽市は、今回(2015年5月)で12回目の開催となりました。たくさんのパフォーマーが参加するようになったのは、5回目ぐらいからだったでしょうか。大道芸を楽しみに、このイベントに足を運んでくれるひとが徐々に増えているのはとてもうれしいことです。

私の経験や参加者の声から、深川美楽市での「大道芸フェスティバル」の魅力を3つ挙げるとすると、次のようになります。

・滞在時間が長くなり、偶然の来場者も呼び込めることから、イベントを知ってもらう機会が増える
・参加者のイベント体験が立体的になり、愛着を持ってもらえる(リピーターが増える)
・会場に歓声や笑顔が広がり、それが一日中続くことで、イベント空間があたたかくなる

これからも、大道芸を通してまちの中にたくさんの笑顔が広がりますように。

連載・ハードパンチャーしんのすけの大道芸人を呼んでみよう!

有限会社にぢゅうまる企画

大道芸で楽しい時間を提供。全国各地に大道芸人・パフォーマーを派遣します